2020年代にはこう変わる!印刷オペレーターが語る次世代通信システム「5G」の驚くべきポテンシャルとその恩恵
今や生活に無くてはならないものになってきました、スマートフォン。いわゆるスマホですが、これは第4世代移動通信システム、いわゆる4Gの技術の産物だと言われています。そして、日本では2020年から5Gのサービスが段階的にスタートします。最近よく聞くこの「5G」という単語ですが、これはどういう意味を持っているのでしょうか?言葉ばかりが先行してよく分からなかったので、少し調べたところ、とても興味深いものだったので少しだけご紹介したいと思います。
歴史
G(Generation)とは?
移動通信システムの世代を区切ったもので今のところ第1世代から第5世代まであります。
第1世代(1G) 1980年代
携帯電話が登場した世代です。当時はまだ重たく高額な通話料がかかりました。しかしここから生活の一部としてその地位を確固たる物とした「ケイタイ」の歴史が幕を開けます。
第2世代(2G) 1990年代
デジタル回線の整備により携帯電話は通話機能という本来の機能の他にもメール機能という新たな機能を獲得しました。これによってパソコンでしか出来なかったEメールの送受信が出来るようになり、通話という手段以外で情報の伝達ができるようになりました。
第3世代(3G) 2001年~
ここら辺りくらいから馴染みのある言葉になってきた感があります。携帯電話がインターネットに繋がるようになった世代です。具体的なサービス名で言えば、iモードやEzwebなどがこれにあたります。それまではビジネスユースの趣が強かった携帯電話ですが、この頃からそれ以外の層にも爆発的に普及し始めます。
第4世代(4G) 2012年~
「今ココ」です。第3世代から飛躍的に通信速度、圧縮技術などが進化して携帯電話でストリーミングの動画を観たり、音楽を聴いたり、ゲームをしたり出来るようになりました。それに伴い端末も大画面化、タッチパネルの技術向上等によって従来の電話型からスマートフォンへの進化に拍車がかかりました。
第5世代(5G) 2020年~
2020年より日本国内でも本格的にサービスが始まる、次世代移動通信システムです。この第5世代は今までの1~4世代までの進化とは一線を画すると言われています。局所的にですが、すでに運用を開始している国もあります。
通話・通信回線の変遷
サービススタート時はアナログでの通話でしたが、アナログ回線では暗号化が出来ないため、傍受が容易にできてしまうという欠点があり、同時にノイズものりやすかったため、セキュリティ的に強固で品質も安定しているデジタル回線に切り替えられてきました。その為、端末自体がデジタル対応になり、通信もパケット通信によるデジタルネットワークへの接続が可能になりました。これにより携帯電話機単体でインターネットにアクセスできるようになりました。
5Gの特徴
これまでと違い5Gでは大きな革新があると言ってきましたが、どのような特徴があるのでしょうか?
高速大容量
通信速度が速くなります。現在使われている4Gは約100Mbps~1Gbps程度の通信速度ですが、5Gは理論上、最大で20Gbpsもの速度を実現しています。そのため4kや8kなどの高画質映像やIoT(後述)による膨大なデータ通信にも耐えうることが出来るようになります。
超高信頼低遅延
通信回線の信頼性がとても高く、遅延もほとんど無くなります。その遅れは約0.001秒以下になると言われています。これらの特性から自動運転、病院の医療用機器や工場などの安全や正確性が最優先されている場所での運用が可能になります。
多数同時接続
IoTの実用化で様々なものがインターネットに接続され、ネットワーク回線を使用します。それ以外にも携帯電話などの端末も同じようにネットワーク回線を使用しますので、その接続数は現在よりも飛躍的に多くなることが予測されています。5Gでは1㎢あたり100万個の端末を接続しても問題なく通信ができると言われています。
今までよりも複雑かつ高解像度できれいな映像が高音質を伴って配信され、リアルタイムでたくさんの人がその臨場感の中で同時に感動を味わえる、2020年のオリンピックまでに実用化を期待したいですね。
5Gを支える技術
1G~4Gまでの進化は技術的な壁にぶつかってそれを乗り越えるたびに世代を更新し、積み重ねてきたという側面が強いものでした。それに対して5Gは新しくできること、新しいサービスなどが特にフィーチャーされています。もちろん通信速度の向上など、今までの技術の進歩の上に成り立つものですが、ネットワークや環境そのものの進化・変化によって展開できるサービスも大きく変わっていくようです。そんな5Gには5Gを5Gたらしめるために必要な技術が4つあります。簡単にご紹介致します。
クラウド
インターネット上にある保存媒体、簡単に言えばこうなると思います。クラウドの出現によってパソコンやメディアを持ち歩かなくてもよくなり、仕事の資料なども会社のパソコンでなくとも、例えばネットカフェや自宅でも必要なデータを取り出すことができるようになりました。GoogleのGメールやMSNのHotmailなどはクラウド技術によるものです。
A.I.(Artificial Intelligence)
人工知能です。人間に代わって物事の判断や予測、結論を導き出してくれます。乗り物からゲームソフトなど、色々なものに活用されています。現在は第3次人工知能ブームと呼ばれ、ディープラーニングなどの技術によって以前とは比べ物にならないほど賢くなっているようです。
IoT(Internet of Things)
直訳すると「物のインターネット」ということになります。その名の通りインターネットに繋がった「モノ」です。例えば家電なら、冷蔵庫やエアコン、空気清浄機など、インターネットに接続されており、スマートフォンやパソコンで外出先からモニタリングしたり操作したり、センサーやAIと組み合わせることによって複雑な作業をオートメーション化したりできるようになります。
ブロックチェーン
5Gの技術の中で最も重要だと思われる技術です。極簡単に言えば情報の管理の方法、メソッドの一種だと言っていいかと思います。イメージですが、情報をブロック状に梱包し、時系列でチェーンのように繋げて管理します。5Gになるとその情報量も莫大になるので、管理する方法も複雑になり、以下のような技術により成り立っています。
暗号化技術
情報の暗号化の技術のことです。少し方向性は変わりますが、暗号化についてはこちらのページも合わせて読んでいただくと楽しいかと思います。
https://isenprint.co.jp/group_blog/group_blog-4925/
P2P
ピア・ツー・ピアと言います。中央集権的な組織やネットワークと異なり、ピア(対等なもの)同士が中央を介さないで互いに直接情報をやり取りするシステムです。中央集権的なシステムが存在しないのでサーバーに対するネットワークトラフィックの渋滞緩和に効果があったり、スムーズなやり取りができるようになるようです。
コンセンサスアルゴリズム
中央集権的な管理者が存在しないP2Pネットワークの上では、システムを保つために意見が食い違ったときに矛盾なく合意を得ることが困難であり、そのような状況下でも合意を取る方法のことをコンセンサスアルゴリズムといいます。ブロックの中に情報をパッケージングする際に中に入れる情報をみんなが確認し、合意を取るシステムだと言ってよいと思います。
DLT(分散型台帳技術)
中央管理者も集権型サーバーも存在しない分散型台帳のことで、情報の台帳を特定のネットワークに繋がってるみんな(ノードと言います)が持つことで情報の改竄などを防ぐことが出来ます。DLTを構成する為にはP2Pネットワークとノード間の複製が確実に行われるコンセンサスアルゴリズムが基礎要件となります。
ブロックチェーンは従来のネットワークサービスのようなサーバー&クライアントという図式ではなく、それぞれの端末が網の目のように対等に繋がっているP2Pを基礎構造としています。中央集中のシステムが無く、加えてDLTによって改竄がほぼ不可能という特性から、ビットコインなどの暗号資産(いわゆる仮想通貨)のシステムに使われているそうです。
何ができる?
では具体的に5Gが実用化されると私たちの生活はどのように変化するのでしょうか?
家庭では
様々な家電にAIが搭載され、IoTによってインターネットにつながるので、例えば自分が会社から出ると同時に家の空調設備が最適な温度で運転を始めたり、外出先のスーパーから冷蔵庫の中身が見られたり、リビングでは様々な角度からの映像や情報により、今まで以上に臨場感のあるスポーツ中継やライブ放送が楽しめるようになると言われています。また家電だけでなく、ドアや窓などの機械以外のものにもIoTによってインターネット接続され、コンピューター制御されるようになると言われており、スマートハウスの実現も可能であると言われています。
交通では
未だ実現には至っていないのですが、必ず実現する、できると言われているテクノロジーが「自動運転」です。技術的にはほぼ可能な域にまで達しているらしいので実用化までは時間の問題と言われています。自動運転がサービスとして確立すれば(いわゆる無人タクシーのようなものです)、電車やバスなどの交通系のサービスに大きな影響を与えることが予想されますし、車メーカーには大きな打撃となることが自明だと言われています。そのため、大手の車メーカーが新たな市場開拓として自動運転の技術を研究しています。
街中では
センサーや画像認識システムの高機能化などによりスーパーやコンビニからレジが消えるかもしれません。アメリカ大手のAmazonが本社横にオープンしたAmazon Goというスーパーではすでにレジがないそうです。入店の際には認証を受ける必要がありますが、入店後は欲しい商品をカゴに入れてそのまま店を出るだけで、すぐに決済される仕組みになっています。
病院では
多くのサービスが実現すると言われていますが、最も大きいのは遠隔手術が可能になることではないでしょうか。主治医の先生が診療所に不在でも遠隔操作で診察してもらうことができますし、実績のある先生に遠く離れた場所から手術をしてもらうこともできるようになります。
郊外では
安全で人手のかからない農業が実現すると言われています。5Gがもたらす物はテクノロジーの中にあるものだけではなく、既存の伝統的な産業にも大きく影響を与えるとされています。人口の流出や少子高齢化で働き手のすくなくなった農家ではオートメーション化した農耕機械やドローンでの薬剤、肥料の散布などが可能になると言われています。
一番大切なこと
極々簡単にではありますが、5Gとはどんなものなのかをご紹介させていただきました。一昔前なら図鑑や絵本に載っていた「みらいのせかい」で紹介されていたような技術がもうすぐ実現するところまで来ているというのは複雑な気もしますが、目に見える形で確実に進歩しているというのはすごいことだとも思えます。
5Gはご紹介した他にも様々な産業やサービスで革命を起こすことが予想されていますが、その最も大切なことは「潜在的需要」にあると言われています。潜在的需要、つまり、「まだ表面化はしていないが、潜在的には存在する需要」、「まだ誰も気づいていませんが、あったらいいなと思えるサービス」ということだと思います。ここに大きなビジネスチャンスがあると言われています。
かつて3Gから4Gへ移り変わった後にGAFA(※1)が覇権を握り、革命的とも呼べるサービスを展開してきました。5Gが実用化された後に覇権を握るのはやはりGAFAなのか中国系のBATH(※2)なのか、それともまた別のグループか個人なのか。その答えはまだ出ていません。
※1 GAFA : Google,Amazon,Facebook,Apple
※2 BATH : 百度(Baidu),阿里巴巴集団(Alibaba),腾讯(Tencent),華為(Huawei)