MUD(メディア・ユニバーサルデザイン)教育検定に合格! MUDアドバイザーに認定されました
先日MUDアドバイザー検定を受け合格し、アドバイザーの認定を頂きました。
ユニバーサルデザインについてご存じの方は多いと思いますが、メディアユニバーサルデザインは私たち制作者が情報を発信していく上でとても重要な考え方ですので、常に意識して印刷物の制作に取り組まなければなりません。
メディアユニバーサルデザイン(MUD)とは何か、そしてMUD教育検定の詳細について紹介したいと思います。
目次
メディアユニバーサルデザイン(MUD)とは
メディアユニバーサルデザイン(MUD)とは、視覚メディア(印刷物やWEBサイトなど)において、高齢者、障がい者や子ども、外国人など、誰もが必要な情報を正しく得ることができるような、見やすく、わかりやすいデザインのことです。ユニバーサルデザインの考え方を視覚メディアに反映するということです。
ユニバーサルデザインに配慮した印刷物を作るにあたって、私たち制作者(DTP・WEBデザイン・オペレーション)は具体的にどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。
ユニバーサルデザイン・印刷デザインの注意点については過去の記事で詳しく説明していますので、こちらもご覧下さい。
MUDの5原則
MUD5原則とは、ユニバーサルデザインの考え方を印刷物、ウェブサイト、看板などで具体化するにあたって、気をつけておくべきこと、配慮しておくべきことを挙げたものです。
例えば高齢者への配慮として、文字を大きくしたり文字間や行間を詰めすぎないようにしたり、明度差をつけた配色にするなどの工夫が必要です。
色覚障がい者への配慮として、識別することが困難な色の組み合わせを理解したうえで配色に配慮しなければなりません。
肢体不自由者への配慮として、施設MAPに表示するトイレの形状やスロープの有無などの情報を入れるようにするなどの工夫が挙げられます。
子どもへの配慮として読み仮名をつけること、外国人への配慮として他言語表記にしたりピクトグラムを使用するなどの工夫が必要です。
デザイン性を無視してはいけません。配色に配慮しつつ、誰にでも美しくという趣旨で作ることが大切です。
将来にわたって長く使用し続けられるような配慮や、印刷物における環境への配慮を実践しましょう。
例)SDGs 再生紙使用 森林認証 植物油インキ など
これらの原則を元に、視覚メディアで情報を提供し、よりよい社会環境づくりに貢献することを目的としています。
参考;NPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会資料
MUDに配慮した制作のために
人間が受け取る情報のうち、8割は視覚からの情報と言われています。しかし、視覚障がい者や色覚障がい者の見え方はさまざまで、その見え方によって日常生活に困っている方がいます。また、加齢により色の見え方も変わってきますし、老眼により小さな文字は見えにくくなります。
色覚の多様性に配慮
日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人が色弱と診断され、日本全体では320万人以上もいると言われています。※CUDO(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)より
伝えたいことを正しく届けるため、まずは色覚障がいの方がどのように見えているのかを理解しましょう。
色覚シミュレーション
一般色覚者が色覚障がいの方の見え方を知るための色覚シミュレーションツールがあります。スマホのアプリでも提供されていますし、DTP・Web作成等に携わる方の多くが使用しているIllustratorやPhotoshopでも、簡単にシミュレーションする事ができます。表示メニューの「校正設定」でP型、D型の色覚シミュレーションができます。
ただ、同じP型色覚でも強度・弱度があり、皆が同じ見え方ではありません。あくまでも擬似的な変換ということに注意しましょう。
色覚障がいに配慮した改善の具体例
下の円グラフの配色では、色覚障がいの方には区別が付きにくいことが分かります。
改善の方法として、例えば
- 隣り合う色の並びを変え、差を出す
- 境界線を入れて分割する
- ハッチング処理をして区別する
といったような配慮が必要となります。
文字への配慮
文字組版
パンフレットなどの印刷物のフォントサイズは8pt以上、最小サイズは6ptが適正と言われていますが、年齢によって読みやすいフォントの大きさも違います。また、フォントサイズに適切な行間・文字間隔・余白も考慮しなくてはいけません。
UDフォントの活用
ユニバーサルデザインに基づいたUDフォントは、「読みやすく、誤読されにくい」を基本コンセプトに、2006年に松下電器(Panasonic)とイワタで共同開発されました。その後複数のフォントメーカーが、独自のデザインのUDフォントを開発しています。
例えばモリサワのUDフォントは、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」をコンセプトに開発されています。
UD新ゴは濁点や半濁点を大きくして文字とのアキをつくるなど、区別をつけやすくしています。
明朝体のUD黎ミンは横画を太めにし、視認性と可読性に配慮しています。
このようなUDフォントを活用するのもMUD配慮のひとつです。今ではUDフォントはパッケージや行政の広報誌、学校の教科書など、様々な場面で使われています。
ただ、文字は表現する目的によって使い分けなくてはいけません。どこにでもUDフォントを使えばいいと言うわけではなく、情報の内容や受け取る側の特性を理解し、使い分けが必要です。
各自治体のMUDの取り組み
MUDに配慮した印刷物を作るに当たって、多くの自治体が手引きを作成したり、MUDの取り組みを実践しています。その例を少しご紹介しますので参考になさって下さい。
MUD教育検定とは
MUD教育検定は、NPO法人 メディア・ユニバーサルデザイン協会が2011年6月より、高齢者や色覚障がいの方々などにもわかりやすい印刷物、Webサイトなどを、制作・発注できる知識・技術を習得することを目的として開始されました。
「MUDアドバイザー検定」と「MUDディレクター検定」があり、MUDアドバイザー検定に合格するとMUDディレクター検定の受験資格が与えられます。
MUD教育検定は、検定会場で講習を受講後、試験を受ける(テキストを見ながら受験)というスタイルです。
アドバイザー検定は2021年2月から試験会場での受験に加え、WEBでの受験も可能になりましたが、コロナの影響で現在はWEB検定のみ受け付けているようです。(2022年5月現在)
ディレクター検定は従来通り会場試験のみで、MUDに配慮した印刷物を制作する理論とテクニックを講義で学びます。講義終了後に筆記試験を受け、後日指定課題を提出します。
詳しくはメディアユニバーサルデザイン協会のホームページをご覧下さい。
今回は先日私が受けたMUDアドバイザー検定についてご紹介したいと思います。
MUDアドバイザー検定
MUDアドバイザー検定とは
MUDアドバイザー検定は、MUDの本質・必要性を理解し、基本的な配慮手法を学ぶことで作品に反映させていける人材が増えるように指導・教育していくことを目的としています。
内容は、色覚・文字組版の2科目で、合格者はメディア・ユニバーサルデザイン アドバイザーの認定資格が与えられます。
MUDアドバイザー検定(WEB検定)を受けるには
まずはホームページからMUD会員の登録を行います。メールアドレスとパスワード設定で簡単に登録できます。
マイページを作成したら検定の申し込みをして、必要事項を入力。検定料はクレジット払いかコンビニ支払いになります。
入金確認後3日以内にテキストが発送されます。(私の場合、申込日から5日ほどで、レターパックライト(ポスト投函)で届きました。)
中には、検定用のテキスト冊子・MUD協会の情報誌・UDフォントの冊子・チラシが入っていました。
講義受講
マイページの動画閲覧ボタンから視聴します。
動画はテキストに則って項目ごとに区切られています。途中で止めることも出来ますので自分の空いた時間を利用して視聴しましょう。内容は色覚編と文字組版編で分かれていて、意外とボリュームがあるので、私は休日の家事の合間でセクションごとに分けて見ましたが、2日程かかりました。
WEB試験
講義動画をすべて視聴したら、WEB試験に進みます。(検定申込後、3ヶ月以内が期限となっていますのでご注意を。)
WEB検定は60分。回答を選択形式でチェックしていきます。問題量は60分で解くのにちょうどの量でしたが、ゆっくり悩んでいたらギリギリになりますので、表示される残り時間を意識しながら解いていきましょう。
テキストを見ながら回答していくので難易度としては高くはないと思います。私はWEB検定自体が初めてでしたので少し戸惑いましたが、時間内にクリアできて一通り問題を見返す時間も残せました。
試験結果
合格基準は色覚、文字組版共に80点以上で合格だそうです。
試験が終わって10分くらいで登録したメールアドレスに試験結果の通知が送られてきました。(1ヶ月くらいかかると思っていたのでびっくりです。)
合格すると、マイページから認定証のPDFデータとアドバイザーのロゴデータがダウンロードできるようになっています。デザイナーの方はご自分の名刺に印刷することもできます。認定証はカードになったものが郵送されてくると思っていたのですが、なんとPDFデータでした。こちらが認定証です。(表と裏)
まとめ
弊社は病院や高齢者向け施設の印刷物を扱っています。高齢者に配慮した文字の大きさは、これまでにも気をつけてきたつもりですが、MUDを学習することで色の組み合わせ方にも配慮が必要である事、また、色覚障がい者、高齢者にとって見分けやすいデザインとは何かを理解するきっかけになったと思います。
私たち制作側は、見た目のデザインも大切ですが、見やすさ・わかりやすさ・伝わりやすさを考慮した制作というのをいつも意識し、デザインしていかなければなりません。ただ注意するのは、高齢者や色覚障がい者のためだけのデザインになってしまってはいけないということ。MUDはだれもが情報を正しく受け取ることが出来るための手法ですので、情報の受け手の対象が偏ってはいけません。
また、MUDに取り組むことで情報を受け取る側だけでなく情報を提供する側にも、「品質の向上」「イメージアップ」「信用と信頼を得る」といったメリットも生まれるのです。
情報を発信する側の役割を自覚し、これからも制作に取り組んで参りたいと思います。